『村落社会と「出稼ぎ」労働の社会学』表紙写真の謎
『村落社会と「出稼ぎ」労働の社会学』の、表紙には、一枚のカラー写真が掲げられています。
よく晴れた青空に、遠くかすむ紫の八ヶ岳。そのふもとの、秋の収穫前の のどかな農村風景。カバーの折り返しのクレジットは調査を行った地域名と「著者撮影」とあり、最初は「きっと、大好きな村の風景なんだろうな」「幸せな景色なんだろうな」と思っていました。
でも、よーく見るうちにいくつか謎が浮かび上がってきました。稲穂は台風の後のようにすべて倒れてしまっているのです。しかし、農家にとって稲が収穫前に倒れてしまっているというのは、悪い光景です。田んぼの左側には、薄紫の花。ジャガイモ? となると季節は夏。田んぼの黄金色は麦ってことに。しかし、周辺の草はどう見ても夏ではありません。
???
その謎を直接、ご本人に聞いてみると、やはり季節は秋。咲いているのはキク。倒れているのは台風の後の稲。
老夫婦が田んぼの刈り取りを委託している農家が、忙しくて刈り取りに来れていない、しかもキクはつぼみで出荷しなければならないのに、時期を過ぎてしまったため花が咲いて、もう出荷不可能。
「幸せな光景」どころか、「農村の今の問題」を写し撮った一枚だったのです。
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