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2008.10.29

内田樹さんの言葉と『ガダラの豚』

 先日、Eさんにちょっとしたものをお貸ししたらお礼にと、内田樹さんの記事の抜き書きを頂きました。Eさんは滋賀県の主婦で、教室を主宰し、並行してバレエや合気道を習うというパワフルな女性。その方が神戸女学院大学までこの内田先生の講義を受講しに通われるくらい、尊敬されているらしいのです。

 それは「幸せのおすそわけ」と題したインタビューで、内田先生は、「あるべき自分」と現在の自分を比べてしまうから自分を不幸だと感じるのだ、とおっしゃっています。そして、そのインタビューはこう締めくくられる。「”内田なんか失敗すればいいのに”と心の中で願っている人がまわりにいれば、その呪いはゆっくり私の心身を冒してゆく。呪いの効果を減殺するのはまわりにいる他の人々からの祝福だけである」。

 この部分を読んで、私の頭には『ガダラの豚』が思い浮かびました。中島らもさんの長編小説です。

 題名の「ガダラの豚」とは、聖書に出てくるエピソードで、キリストがガダラという町に行くと死霊が出迎えます。キリストが「行け」と命じると死霊たちは豚の中にとりつく。その豚たちはあっという間に海に落ちて死んでしまう、というお話だそうです。
 小説の中で、このエピソードはキリスト教の中で悪霊の存在を認めている部分、というふうに使われていました。

 小説のストーリーは、アフリカの呪術を研究するタレント教授とその家族が、テレビの取材としてアフリカを訪れ、家族を守るために死を賭して呪術師と戦うというものです。アフリカでの呪術とは、法律や医療の役割も果たすようなものだと説明されます。牛を7頭持っている人は、3頭しか持ってない人に呪われる…。そういうところで呪術師の出番となるそうです。呪われた側が「呪いを返す」ように頼むのです。「幸せのおすそ分け」を読むと、内田先生は呪術師に頼まないで自分で呪いに対処されているようです(笑)。貯金しないでなるべく人に奢る、お金は貸すというように。

 しかし、小説に登場する敵呪術師ってやつは、かなり凶悪。何人もの人が殺されます。人の意識に入り込んであやつる力も持っています。中島らもさんは人間の持つ禍々しさを描くのがうまい。ただ、バランス感覚が非常にすぐれていて、邪悪なものと対峙するのは家族への愛情しかないという構造にしています。だから凄惨な場面を乗り越えて急展開し完結する物語は一種の爽快感すら与えてくれます。

 というような『ガダラの豚』の呪術と、神戸女学院大学教授の内田樹先生の言葉が私の中でリンクしたのでした。

 Eさんありがとうございました。バレエ発表会のDVDは機械の調子が悪くてまだ拝見できてません…。ごめんなさい。

 『ガダラの豚』上下 中島らも

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Comments

偶然にもつい先日友人から、
この「ガダラの豚」を薦められました。
まだ読んでませんが、とてもおもしろそうですね。
最近、「せんべろ探偵が行く!」という本を
読みました。
らもさんって、ホントにすごい人やったんな・・・
と、しみじみ。

Posted by: とも | 2008.10.31 at 02:40 PM

ともさん

 ともさんが「せんべろ」ですか?
 あ、そっかー、らもさんと言えば
 お酒ですもんね。

 『ガダラの豚』は日本推理作家協会賞受賞作ですが、推理というより超能力とか精神世界とかの要素のほうが強い気がします。

 かなり関連する専門書も読んでから書いておられるみたいで、エンターテイメントであるけれど、内容は奥深く感じます。

 2冊目の半ばくらいからどんどんテンポアップしていって、ノンストップで読んでしまいました。もう2度目です~。今度、お貸ししましょうか?good

Posted by: あひる@滋賀 | 2008.10.31 at 03:57 PM

おもしろそうー!
もう少し落ち着いたら
図書館で探してみますね。
また良い本教えてください。

Posted by: とも | 2008.11.04 at 09:28 PM

ともさん

 あ、いまお忙しい時期でしょうか。
 また、思い出してflair読んでみてくださ~い。

Posted by: あひる@滋賀 | 2008.11.05 at 11:54 AM

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