『困ってるひと』大野 更紗
戦っているのはあなただけじゃない。私も、あの人も、誰も、みんな、それぞれに背負っているものと戦っている。
痛み・苦しみ・困っていることがてんこ盛りの大野さんの闘病記。花の東京で女子大学院生としてビルマ難民支援に走り回っていたのに、突然「難病」に倒れてしまう。だけど彼女はそんな自分を客観できる。冷静に。
もがき苦しんでも「絶望しない」。
自分を「難病女子」と命名したり、まともな病院ライフを送るための気遣いの必要性など、具体的にはいちいち説明しないけど入院経験のあつ人にはわかる記述をしたりする。
闘病記の中に、ユーモラスな記述をはさむことを忘れない。
ものすごい状況だけど、フツーの私たちと同じところにいて、同じように生きている、そう感じさせてくれる。
彼女自身、CTの中に入った時、耐えるために「自分はブッダだと思い込む」と例えている。だが、誰も最初から悟りを開けるわけじゃない。
彼女はあくまで前向きだ。「絶望しない」という固い意志を持つことができたのは、たぶん何度も絶望を繰り返したのちにたどり着いたスタンスなのだろう。
「こんなに大変な状況でも、前向きにがんばっている人がいるなら、私も負けずにがんばろう」
と簡単に思っちゃいけない気がする。
この本を買いに書店に行って、あいまいな記憶で「こまったひと」というタイトルで見つけられなかった。「こまったひと」じゃなくて「こまってる人」なのだ。彼女自身が困っているだけであって、「本人が困ったちゃん」であるわけがない。なんだか申し訳ない気持ちになった。
『困ってるひと』大野 更紗著
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