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2011.07.22

『スピカ』羽海野チカ初期短編集

『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の羽海野チカさんの10年前くらいの短編作品集です。

タイトルになっている『スピカ』は高校3年生の男の子と女の子の淡い始まりのお話。転校してきた女の子はクラスの中でまったく話もしない、不思議な子。でも、実はバレエの練習を必死でやっているゆえだったのです。

その子に興味を持ったのが野球部の部長。そして同じクラスの野球部副部長。「あの子を花火大会に誘いたい」と部長が言った時から、副部長は女の子を意識するようになります。

転校したばかりで勉強についていけない女の子を、野球部の勉強会に誘い、次のテストではよい成績を取らせた副部長。彼女の抱える悩みを知り、自分も怪我をしてレギュラーから外れたことを打ち明けます。

バレエと野球、お互い、何があってもあきらめきれないくらい好きなことがあると知り、必死でがんばっている二人。それを知って、彼女も力が湧いてくるのでした。

高校生活最後の県大会とバレエコンクールが同じ日にあり、終わった後でばったり出会った二人は、花火大会に行くことにします。

はああ、なんて甘酸っぱい、けど八方ふさがりの時代を思い出す作品なんでしょう。先は見えない。まったく自分にプロになる可能性があるかどうかなんてわからない。家族からも反対されている。学校の勉強もしなきゃ……。

そんな閉塞感の中で生きている高校生って、いまこの瞬間にどれだけいるんだろう。

でも、そんな時期を自力で切りぬけたら、たとえ失敗したとしても、また別の地平が見えてくる。その時は必ず来る。

羽海野チカさんの作品は、読んだあと心が温かくなるようなものが多いのです。

この作品集に収められている短編も、まるで童話のような雰囲気です。主人公の小さな子が理不尽に悲しいめにあったとしても最後は「めでたしめでたし」で終わるような。そんな物語を読むと、子どもの心に力が湧いてくるのです。

これが「物語」の持つ力なのでしょう。あの『はてしない物語』のように。


『スピカ ~羽海野チカ初期短編集~』

この本の印税はすべて、東北大震災への義援金となさるそうです。

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